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SEEDer 2012年6号 | ルーマニア政府観光局

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ドナウデルタをめぐる国際法レジームのダイナミズム

SEEDer 2012年6号

1 ドナウ・デルタと国際法

ドナウ・デルタは、欧州の長大な越境水路ドナウ川の最下流域である。モルドバ、ルーマニア、ウクライナの3国にまたがり、黒海に面して3つの支流(キリヤ川、スリナ川、セット・ジョージ川)からなる。欧州最大の湿地であり、渡り鳥や多様な野生動植物種の豊庫である。他方で、住民は小規模な農業、漁業、牧畜で生計を立てており、生活水準は相対的に低い。地域では、ソ連邦解体後の過渡期における政治・経済問題を抱え、海運業も衰え、経済は衰退している。このようなドナウ・デルタには、多様な観点からさまざまな国際条約の規律が及ぶ。たとえば、このデルタにはその生態学上の価値から、諸々の国際的な自然保護区がある。それらは、湿地保護ラムサール条約(2つの登録湿地)、ユネスコ世界遺産条約Oレーマニア領の世界自然遺産、ユネスコ「人と生物圏j(MAB)計画(ラムサール登録湿地に重なる越境生物圏指定地)による。また、現段階で具体的な構想に進展はないものの、流域3国の越境自然保護区の創設・管理協定もある。そして、デルタの保全・持続可能な利用のために、ドナウ川保護条約(DRP条約)、国連欧州経済委員会(UNECE)越境水路保護条約、欧州野生生物生息地保全条約(ベルン条約)も適用される。また、デルタの開発事業は、UNECE越境環境影響評価条約(エスポ条約)とUNECE環境に関する公衆参加条約(オーフス条約)に服する。さらに、ドナウ川での商業船舶の自由航行を国際的に保障するドナウ川航行条約(1946年)は、スリナ川に沿ってルーマニア領内を流れるスリナ運河に適用される。

そして、ルーマニアとウクライナの国境としてのキリヤ川には、両国間の国境協定の規律も及ぶ。このようにして、ドナウ・デルタは、流域3国の各領域としてそれぞれの領域主権に服すると同時に、その利用は多様な観点から国際法の規律を受ける。つまり、国際法上、一定の目的のために流域国の主権の行使が一定程度制限されている。

2.国際問題としてのウクライナによる可航水路開削事業

国際的に問題となったウクライナの事業は、大型船舶の可航水路として、キリヤ川流域にあるビストロエ川を整備するものである(ビストロエ水路事業)。具体的には、ビストロエ川の掘削(水深と幅の拡大)、ビストロエ川河口周辺黒海沿岸域の防潮堤の建設(黒海からの土砂流人の防止のため)、キリヤ川の部分的掘削(船舶航行の円滑化のため)等を含む。その背景には、黒海地域をめぐるウクライナとルーマニア間のライバル関係がある。ソ連邦解体以降、ドナウ川と黒海を結ぶ大型船舶の可航水路は、ドナウ・デルタ地域ではスリナ運河だけとなっていた。ウクライナは、経済的かつ戦略的な観点からこの状況を懸念し、ビストロエ水路事業に着目した。ところが、ビストロエ川はウクライナ領でありながらドナウ・デルタにある。このことから、この事業の実施は、主に以下の3つの点で、前述した複数の環境条約等の下で問題となった。

①ウクライナは、この事業が環境(他国の環境を含む)に重大な悪影響を与えるリスクがあることから実施しなくてはならなかった諸手続を、適切に実施していない。

諸手続とは、越境環境影響評価、ルーマニア(潜在的な被影響国)への通報、同国との協議(以上、エスポ条約)、国際的な機関またはルーマニアへの情報提供、通報、それらとの協議、環境影響評価、モニタリング(以上、DPR条約、ベルン条約、ラムサール条約)、自然保護区のゾーン変更の事前承認(ユネスコMAB計画)等を含む。

②ウクライナ政府の事業決定過程で、公衆の参加が確保されていない(オーフス条約、エスポ条約)。

③ビストロエ水路事業は、流域環境の保全・持続可能な利用(DPR条約)、ドナウ・デルタの生態系の保護(ベルン条約)、自然保護区の保全(ラムサール条約、ユネスコMAB計画)という条約等の目的と両立しない。

以上のように、ビストロエ水路事業をめぐる国際的な問題には、2つの側面がある。ひとつは、ウクライナとルーマニア間の国際紛争、もうひとつは、『複数の多国同条約等の目的確保・不遵守問題という、それら条約等のすべての締約国が共通の利益をもつ多辺的な問題としての側面である。

3 国際的な問題処理の特徴

ビストロエ水路をめぐる問題は、これまで約8年間、複数の異なる条約等の下で同時に処理されてきた。また、欧州連合もウクライナとの連携協力協定(Partnership and Co-operation Agreement)や提携協定(Association)にもとづく政治的対話のなかで、以上の条約の遵守を同国に求め続けている。そこでは、共通して「対話」のアプローチが採用されている。具体的には、事実審査(inquiry)、多辺的な説得(multilateral persuasion)、能力構築のための国際的支援(international assistance)の組み合わせである。これは、司法手続や対抗措置とは対比される、非強制的な(ソフトな)プロセスである。第一に、第三者的な機関による事実審査(ラムサール条約事務局/ユネスコの合同視察〈2003年〉、ベルン条約にもとづ〈現地調査〈2004年、2008年〉、EU主催の合同視察〈2004年〉、エスポ条約審査手続〈2006年〉)を通じて、『ビストロエ水路事業は垂大な(越境)環境リスクをともなうことが認定された。これは、その存否をめぐるウクライナとルーマニア等他の関係者間の見解の対立を解消につながる。ビストロエ水路事業をめぐる問題処理は、何をもたらしたか? ビストロエ水路事業をめぐる問題処理は、現段階で主に3つの方向に展開している。1にこの事業についての諸手続(環境影響評価、事前通報、情報提供、協議)の不実施については、主に条約にもとづく不遵守審査手続の適用(義務不遵守の認定、是正措置の勧告、勧告実施のフォローアップ)により、条約義務の不遵守がしだいに是正されつつある。ここでは、とくにエスポ条約の下での対応が注目される。とはいえ、ウクライナはビストロエ水路事業の停止勧告(同条約MOP決定の一部)に応じないため、MOPは同国にたいする「警告」(caution)を採択した(2011年7月)。エスポ条約の不遵守審査手続によるMOPの勧告を受け、重大な越境悪影響を生じるおそれのある活動(ドナウ・デルタの開発事業も含む)について、同条約をルーマニアとウクライナ間で具体的に実施するための協定の締結交渉が始まった。もうひとつには、DRP条約にもとづき設立されたダニューブ川保護国際委員会(International Commission for the Protection of the DanubeRiver: ICPDR)の支援を受け、モルドバを含む流域3国間でドナウ・デルタ流域管理計画の策定作業が進んでいることである。ICPDRでは、ここ数年間ドナウ川流域管理計画の作成を進めていたが、ドナウ・デルタでは流域3国間の対話がなくその作成が遅れていた。ビストロエ水路事業は流域国問の対立の源となったが、他方で、長年滞っていた流域国間相互の対話を、とくに実務レベルで促すことになったのである。近年、ICPDRではUNEP等の協力も得て、むしろビストロエ水路事業それ自体の問題は棚上げにし、デルタ全体の管理に関する流域3国間の対話と協力関係の推進を追求している。具体的には、デルタの管理をめぐる情報交換・共有、合同モニタリング等、実務レベルの連携・協力の模索である。以上のように、ビストロエ水路事業をめぐる問題は、複数の多国同条約等の下での複合的なプロセスを経て、流域3国間の対話を促した。その結果として、手続的義務を通じた法的枠組の強化をもたらし、実務的な協力関係の構築を推進しつつある。このような現実の展開のなかに、ドナウ・デルタをめぐる国際法レジームのダイナミズムを見ることができよう。

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