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知られざる素朴な「世界遺産」を東欧の自然とともに満喫する

サライ 2001年11月号

緑豊かな自然の中に、世界遺産が点在する国、ルーマニア。

ラテンの流れを継ぐ陽気な国民性と、生活に根づいた伝統の継承。異文化の新鮮な発見がここにある。

 東欧に位置するルーマニアは、日本の面積の約5分の3、約24万Km2 ほどの国。かのドラキュラ伝説は有名だが、多くの世界遺産を保有していることは意外と知られていない。現在7つの登録があるが、教会群などをひとつひとつ数えれば、その数は29にもなる。

 代表的な世界遺産は、北部のウクライナ国境にほど近いマラムレシユ地方の「木の教会」群。その東側に隣接するブコヴィナ地方の「五つの修道院」。中央部トランシルヴァニア地方の「シギショアラ歴史地区」などがある。

森に囲まれた歴史的建物

 車で国内を移動していくと、どこの都市も一歩抜け出れば、すぐに緑豊かな自然が広がってくる。息をのむほど美しい、艶やかな緑が車窓を覆ってくる。

 マラムレシユ地方の欝蒼とした木立の中に、イエウドゥ教会がある(右ページ写真)。国内に8つある世界遺産の木造教会のひとつで、1364年の創立である。威風堂堂とした姿に圧倒されるが、中に入れば、木の持つ温が穏やかな気持ちにさせてくれる。

 「五つの修道院」は、ブコヴィナ地方に点在している。どの修道院も、その経てきた歴史を物語る景観だ。建物の内部にフレスコ画が描かれている建築物は数多いが、ここに見る修道院のように、外壁に隙間なく描かれているのは何とも珍しい。

 壁画には、戦いの様子や敗北するイスラム教徒、ルーマニア正教徒が天国に入る場面などが、絵巻物のように描かれている。風雨にさらされているため、修復も行なっているが、剥げ落ちて画が薄らいでいるのも、味わいがある。

 森に囲まれた町、シギショアラは、ドラキュラ伯爵ことヴラド・ツェペシュの生地。ドイツ系移民の影響を受けたこの町の歴史地区は、世界遺産に登録された。また、近郊の村ビエルタンにも、世界遺産の要塞教会がある。

北部マラムレシュ地方の、のどかな村々

 ルーマニア北部のマラムレシュ地方に近づくにつれて、縁はより一層深くなる。牧草地が多いこの地方では、羊の大群が道路をぞろぞろ行進する光景がみられる。羊飼いに先導された羊が通り過ぎるまで、旅行者は車を路肩に止め、地元の人々も道の端に寄って、微笑みながらこの一群を見送っている。

 羊飼いという職業が成り立つのは、広大な地に限られる。360度の景色が広がる場所に佇むと、胸の奥が全開して呼吸が楽になってくるから不思議だ。

 この地方の民族衣装や、壁掛けに羊毛は欠かせない。白い綿のブラウスに、色鮮やかなウールのスカートやチョッキを合わせるのが、マラムレシュ独特のスタイルだ。赤や黒、青の鮮明な色合いが好まれる。丘陵地の緑と木肌の色合いに、民族衣装が印象的にとけ込んで見事に調和している。

親しみやすい陽気な国民性

 シエウ村では年に一度の「イザ川の可愛いお嫁さん」という、演奏やのど自慢を競う祭りが開かれていた。この国では、民族衣装と民族音楽が大切に受け継がれている。人々はひと懐っこく、旅行者も気さくに招き入れてくれる。

 ルーマニア人の源は、インド・ヨーロッパ語族のダキア人と、ローマ人の混血による。そのため、東欧唯一のラテンの国と呼ばれ、その陽気な国民性は、ラテンの血によるものというのも頷ける。

 それは、サプンツァ村にある「陽気な墓」にも表れている。色鮮やかな墓碑には、故人の生前の生活が絵とユーモラスな文章とともに描かれている。これは古代ダキア人の、死をものともしない習慣から由来するともいわれる。

 広大で豊饒な土地で作られる農作物も豊富である。各家庭の食卓は、肉、穀物、野菜、豆などをふんだんに使いじつに豊かだ。どれも日本人の口に合う料理が多い。中でも、ロール・キャベツに似た「サルマーレ」は秀逸だ。

 サルマーレとともに是非味わいたいのが、「ツイカ」という蒸留酒である。ルーマニアのどこのレストランでも、「ノロックー」(乾杯)の声とともに酌み交わされている。各家庭でも、ワインとともに醸造している。シエウ村のデユニカ・イオンさん(70歳)は、「一般的にスモモで造りますが、この辺りでは、秋は梅、はりんごを使って造るんですよ」という。市販されてはいるが、自家製の味わいはまた格別。ほのかなスモモの香りが爽やかだ。

首都ブカレストに色濃ぐ遺る、昔日の面影

 首都のブカレストは、その昔〃プティ・パリ(小さなパリこと呼ばれた面影を未だに漂わせている。

 第一次大戦の勝利を記念して建造された「凱旋門」は、確かにパリを彷彿とさせる。「統一大通り」がまっすぐ延びる様もシャンゼリゼ同様だが、辺りは閑散としている。

 興味深いのはチャウシェスク政権時代の遺物、「国民の館」。部屋数は3000を超える巨大な建物で、旅行者も内部の見学ができる。総重量で3500トンのクリスタルを用いた、壮麗なシャンデリアの数々。豪華なカーペットや、輸入品の精緻な家具を見るにつけ、時代を揺るがした独裁者の野望の果てしなさに驚かされる。

 世界中に報道された1989年の政変から、ほぼ12年が過ぎた。政治経済の中心地ブカレストは、徐々に華やかな街に変わりつつある。ブランド店が立ち並ぶ繁華街、活気溢れる市場、公園で憩う人々など、その表情は明るい。

 また、音楽、芸術活動にも熱心で、オペラ劇場などの音楽施設、美術館、博物館なども多くこの辺りに建っている。遥々、ここで学ぶ日本人留学生の姿も見られる。変化しつつある都会と、地方に残る伝統色、ルーマニアの過去と現在は複雑に交錯している。

© 佐藤美子 (Yoshiko Sato)   権利者に無断で複製及び転載等は禁止。

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