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▲トップへエリアーデ幻想小説全集〈第1巻〉1936‐1955 レビュー
生涯にわたって「聖なるものの顕現」を探究し、20世紀文学に偉大な足跡を残したエリアーデ。 その魂の軌跡ともいうべき幻想小説を編年体で網羅した、世界初のオリジナル全集。第1巻は1936~55までの8編を収める。
世界的に有名な宗教学者のエリアーデは、母国語のルーマニア語で小説を書く小説家でもあった。 自伝的な恋愛小説の「マイトレイ」や「妖精たちの夜」は、いわゆるリアリズム作品であるが、エリアーデはその他に幻想小説の名品を数々残している。 この第1巻では、すでに邦訳が出版されている「令嬢クリスティナ」や、「ホーニヒベルガー博士」「セランポーレの夜」のほかに、未訳であった「大物」や「大尉の娘」といった短編小説が収められている。
少々値段ははるが、単行本2冊プラス短編集を買ったと思えば、納得できなくもない。 何といったって、ひと筋縄ではいかないエリアーデの未訳出小説が読めるのはここだけである。沼野充義の解説も詳しくていい。 次に発売予定の第2巻も楽しみだ。
目次
- 令嬢クリスティナ
- 蛇
- ホーニヒベルガー博士の秘密
- セランポーレの夜
- 大物
- 弟思い
- 一万二千頭の牛
- 大尉の娘
- Eliade, Mircea (エリアーデ, ミルチャ)
- ルーマニアの世界的な宗教学・宗教史学者。1907年首都ブクレシュティ(ブカレスト)に陸軍将校を父として生まれる。ブクレシュティ大学でナエ・ヨネスクを師に哲学を学ぶ。1927、28年イタリアに留学。29‐31年インドに留学しこの研究生活を通じて宗教学・宗教史学者としての方向が決定づけられる。帰国後33年から母校で哲学を講義、38‐42年パリで宗教学研究誌『ザルモクシス』を刊行。40年ロンドンのルーマニア文化アタッシュに任命される。それ以後国外を活動の場として、46年ソルボンヌ大学宗教学講師、57年からはシカゴ大学神学部宗教史学科主任教授をつとめた。1986年死去